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朝の通勤路を少し変えて、いつもより一本南側の道を歩いた。まだ冷たい風が吹いていたが、街路樹の枝先に小さな芽が膨らみ始めているのが見える。陽の光が斜めに差し込んで、アスファルトの上に長い影を作っていた。何気なく立ち寄った古書店の軒先に、埃をかぶった文庫本が数冊、無造作に積まれていた。
その中の一冊、褪せた紺色の表紙に惹かれて手に取ると、中世ヨーロッパの修道院における写本文化についての本だった。ページを開くと、かすかにカビ臭い匂いが鼻をついた。本の中に、こんな一節があった。「写字生たちは一日の大半を沈黙の中で過ごし、羊皮紙に一文字ずつ、丁寧に文字を写していった」。その光景を想像すると、現代の私たちがキーボードを叩く速度との対比に、不思議な感慨を覚える。
中世の修道院では、知識の保存と伝達が写字生たちの手作業に完全に依存していた。一冊の本を完成させるのに数ヶ月、時には数年を要したという。彼らは単なる筆写者ではなく、装飾を施し、余白に注釈を加え、時には誤りを訂正した。