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冬至を過ぎて、街は年末の慌ただしさに包まれている。そんな中、私は小さな蕎麦屋の暖簾をくぐった。創業八十年という老舗は、時代の波に揺れることなく、変わらぬ味を守り続けている。
鴨せいろを注文した。運ばれてきた蕎麦は、深い翡翠色をしている。石臼挽きの十割蕎麦だという。まずは一本、何もつけずに口に運ぶ。ツルッとした喉越しの中に、ほのかな蕎麦の香りが鼻腔を抜けていく。そして噛みしめると、プツンと切れる瞬間に蕎麦の甘みが広がる。これぞ蕎麦本来の味わいだ。
鴨汁の湯気が立ち上る。脂の浮いた表面がきらきらと光っている。鴨肉は、厚めに切られた胸肉が五切れほど。箸で持ち上げると、しっとりとした重みを感じる。一口頬張ると、ジュワッと肉汁が溢れ出す。火の入れ方が絶妙だ。中心部はほんのりピンク色で、柔らかくもしっかりとした歯応えがある。鴨特有の野性味は控えめで、上品な旨味だけが残る。