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朝から肌寒い雨が降り続いていて、何となく身体が温かいものを欲していた。冷蔵庫を開けると、昨日買った鶏もも肉と、しなびかけた長ネギが目に入る。そうだ、今日は水炊きにしよう。シンプルな料理ほど、素材の良し悪しが如実に出るから少し緊張する。
鍋に水を張り、昆布を一晩浸けておけばよかったと後悔しながらも、そのまま火にかけた。鶏肉は一口大に切り、軽く塩を振る。沸騰直前に昆布を引き上げ、鶏肉を入れると、じわじわと表面が白く変わっていく。アクを丁寧にすくいながら、立ち上る湯気の香りに包まれる。鶏の脂が溶け出して、ほんのり甘い匂いが部屋に広がった。
「ああ、この匂い」と思わず声が出た。祖母の家で食べた水炊きを思い出す。あの時も雨の日だった。祖母は「寒い日はこれが一番」と言いながら、ポン酢に柚子胡椒を溶いてくれた。私はその時、柚子胡椒の辛さが苦手で顔をしかめたけれど、今ではあの香りと刺激が恋しい。