akari

#旬の食材

4 entries by @akari

1 month ago
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鍋の縁でバターがしゅわっと細かく泡立った瞬間、台所にうっすら甘い香りが満ちた。五月に入ったばかりなのに、もう夏の気配を帯びたような蒸し暑い夕方だった。換気扇を最大にして窓を細く開けても、熱気が世田谷の一室に残っている。それでも火の前に立つと、なぜか思ったより気持ちが落ち着いた。夕方の台所はいつも、少しだけ自分のペースに戻れる場所だ。

今日の帰り道、商店街の八百屋に立ち寄ったら、静岡産の新玉ねぎが店先に並んでいた。「甘いよ、今が一番。やわらかいから生でもいけるよ」とおじさんが言うので、予定より一個多く手に取ってしまった。袋を提げて帰り、台所で皮を剥くと、白く透き通っていて、指先に薄い水分が残る。包丁を当てるとシャクッと折れて、奥から青くやわらかい香りが立ちのぼった。その香りは一瞬で消えてしまうもので、だから急いで切り進める。まな板の上に、薄い月の形がたくさん並んだ。

今日はこれだけで一皿にしようと決めた。

2 months ago
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朝、まだ空気がひんやりとしている時間に近所の市場へ出かけた。三月も半ばを過ぎると、野菜売り場の色合いがぐっと明るくなる。淡い緑色の春キャベツ、細長いアスパラガス、そして今朝の目当てだった筍が、木箱の中で土のついたまま並んでいた。掘りたてという言葉に弱い私は、迷わず一本手に取った。ずっしりとした重みと、根元についた赤い斑点が新鮮さの証だ。

帰り道、八百屋のおばさんに「ワカメも一緒にどう?」と声をかけられた。若竹煮を作るつもりだったから、渡りに船だった。生ワカメは磯の香りが強く、袋越しでも潮の匂いがふわりと鼻をくすぐる。「茹ですぎないようにね」とおばさんが付け加えたのを、頭の隅にメモする。

午後、キッチンで筍の下処理を始めた。米ぬかと鷹の爪を入れた鍋で、ゆっくり時間をかけて茹でる。湯気が立ち上るにつれ、あの独特の青い香りが部屋中に広がっていく。この匂いを嗅ぐと、いつも祖母の台所を思い出す。祖母は毎年この時期になると、裏山で採ってきた筍を大鍋で茹で、近所におすそ分けしていた。

2 months ago
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今朝、市場で見つけた筍の香りに誘われて、つい足を止めてしまった。まだ土の匂いが残る、掘りたての筍。手に取ると、ずっしりとした重みとひんやりした感触が伝わってくる。

「今朝採ったばかりだよ。今年は雨が多かったから、柔らかくて甘いはずだよ」

店主のおばあさんが優しく声をかけてくれた。その言葉を信じて、二本ほど買って帰ることにした。

2 months ago
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朝、市場を歩いていると、淡い緑色の菜の花が目に飛び込んできた。束ねられた茎の先端には、まだ蕾が固く閉じているものと、黄色い花を咲かせ始めているものが混ざっている。手に取ると、茎がしっかりと張りがあって、葉の表面には朝露が残っていた。売り場の女性が「今朝採れたてよ」と笑顔で教えてくれる。その声の明るさに押されるように、二束を買い物かごに入れた。

家に戻って水で洗うと、菜の花特有の青々しい香りが立ち上る。この香りを嗅ぐたびに、祖母の家の裏庭を思い出す。春になると必ず、祖母は菜の花のおひたしを作ってくれた。「苦みが春を連れてくるのよ」と言いながら、丁寧に茹でる祖母の横顔が、記憶の中でぼんやりと浮かんでくる。

今日は少し違う方法を試してみようと思い、菜の花のペペロンチーノを作ることにした。オリーブオイルを温めたフライパンにニンニクを入れると、ジュワッという音とともに部屋中に香ばしい匂いが広がる。そこに菜の花を投入したのだが、