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朝、台所に立つと窓から差し込む光が少しやわらかくなっていることに気づいた。三月の光は二月とは違う。空気の冷たさは残っているけれど、その中に春の予感が混ざっている。今日は桃の節句。ひな祭りのちらし寿司を作ろうと、昨夜から準備していた具材を冷蔵庫から取り出した。
錦糸卵を作るとき、母がいつも言っていた言葉を思い出す。「薄く、均一に。急がないこと」。フライパンに薄く油を引いて、溶き卵を流し込む。ジュワッという音と同時に広がる卵の香ばしい香り。火加減を弱めて、表面が乾くまで待つ。この待つ時間が大切なのだと、何度も失敗してようやく分かった。去年は焦って裏返そうとして破れてしまった。今年は落ち着いて、菜箸でそっと端を持ち上げる。きれいに剥がれた。
酢飯