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朝、窓を開けると冷たい空気が頬を撫でた。まだ薄暗い台所で、昨晩から仕込んでおいた麹と米が静かに呼吸している。蓋を開けると、ふわりと甘い香りが立ち上る。この香りを嗅ぐたびに、祖母の家の土間を思い出す。あの頃は意味もわからず、大きな甕を覗き込んでいた。
今日は自家製の甘酒を仕上げる日だった。温度計を見ながら、60度を保つように火加減を調整する。少し高くなりすぎて、慌てて火を弱めた。焦りは禁物だと自分に言い聞かせる。ゆっくりと木べらで混ぜていると、とろみが増していくのがわかる。米粒がほどけて、全体が滑らかになっていく。
友人が訪ねてきて、「何作ってるの?」と覗き込んだ。「甘酒」と答えると、「砂糖入れないの?」と驚いた顔をした。「米と麹だけで甘くなるんだよ」と説明すると、信じられないという表情で首を傾げていた。