冬の朝、鮮魚市場のすぐそばにある小さな定食屋の暖簾をくぐると、炊きたてのご飯と出汁の香りが体を包み込んだ。カウンターに座ると、その日の朝に揚がったばかりの真鯵を使った定食が運ばれてきた。
白い器に盛られた鯵の刺身は、透明感のある薄桃色をしている。脂の乗りが良く、身がぷっくりと盛り上がり、光を反射している。生姜の細切りと大葉の香りが、鼻腔をくすぐる。箸で一切れつまむと、身がしっとりと箸に吸い付くような感触。口に入れた瞬間、コリッとした弾力のある食感の後に、トロリと溶けるような脂が舌の上で広がっていく。
鯵特有のほのかな磯の香りと、甘みを帯びた旨味が口の中いっぱいに満ちる。醤油をほんの少し付けると、塩気が鯵の甘みを引き立て、生姜の爽やかな辛みが後味をすっきりとさせる。白いご飯を一口。米粒一つ一つがふっくらと立っていて、噛むたびにモチモチとした弾力と優しい甘みが広がる。