深夜一時を過ぎたコインランドリーで、石田は雨上がりの匂いをまとったまま洗濯物をドラムに押し込んでいた。 入口の近くの椅子に、折り畳みでない黒い傘が立てかけてあった。取っ手の革の部分が少し擦り切れていて、うすく「M」と読める文字が彫ってある。...
#深夜
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深夜一時を過ぎたコインランドリーで、石田は雨上がりの匂いをまとったまま洗濯物をドラムに押し込んでいた。 入口の近くの椅子に、折り畳みでない黒い傘が立てかけてあった。取っ手の革の部分が少し擦り切れていて、うすく「M」と読める文字が彫ってある。...
深夜二時のコインランドリーには、男が一人いた。 洗濯機の丸窓の向こうで、白いシャツが回っている。くたびれた旅行バッグを足元に置いて、男は自販機で買った缶コーヒーを飲んでいた。温かくも冷たくもなかった。蛍光灯が一定のリズムで点滅していて、ずっ...
深夜二時の駅のホームで、私は最終電車を待っていた。 誰もいないはずだった。時刻表を三回も確認した。でも、ホームの端に、女の人が立っていた。 黒いコートを着て、じっと線路を見下ろしている。髪が長くて、顔は見えない。 「もうすぐ来ますよ」 私は...
深夜二時、コンビニからの帰り道。いつもの住宅街を歩いていると、見慣れない路地に気づいた。 この道、あったかな。十年以上この街に住んでいるのに、記憶にない。好奇心に負けて、その路地へ足を踏み入れた。 街灯がひとつもない。スマホの明かりだけが頼...
深夜二時、コンビニの蛍光灯が白く輝いていた。 バイト帰りの私は、いつものように角を曲がり、公園の脇を通り抜ける。誰もいない滑り台が、街灯の下で影を落としている。 その時、公園の奥にある古い公衆トイレから、かすかな光が漏れているのに気づいた。...
深夜二時、いつものコンビニで缶コーヒーを買った。 レジの店員は見たことのない女性だった。青白い顔、長い黒髪。名札には何も書かれていない。彼女は無言で商品を受け取り、バーコードを通した。ピッという音が妙に遠く聞こえた。 「三百円です」 声が低...
深夜二時、コンビニの自動ドアが開く音がした。 私はレジの奥で棚卸しをしていた。客は誰もいないはずだった。振り向くと、入口には誰もいない。ドアはゆっくりと閉まっていく。 センサーの誤作動だろうと思った。 また作業に戻ろうとした時、冷蔵庫のドア...
深夜二時。 窓の外は雨だった。アパートの廊下を歩く足音が聞こえる。規則正しく、誰かがゆっくりと階段を上ってくる。 私は鍵を確認した。チェーンもかかっている。 足音は三階で止まった。私の部屋の前だ。 ドアの前で何かが立ち止まる気配。息を殺して...