朝市で菜の花を見つけたとき、その鮮やかな緑色に思わず足を止めた。まだ蕾が固く、葉先に朝露が残っている。「今朝採ったばかりだよ」と農家のおばさんが笑顔で声をかけてくれた。春の訪れを告げる野菜は、見ているだけで心が軽くなる。
帰宅後、すぐに下処理を始めた。沸騰したお湯に塩をひとつまみ入れ、茎の部分から先に湯に入れる。ここで少し失敗した。いつもより30秒ほど長く茹でてしまい、菜の花の鮮やかな緑が少しくすんでしまった。氷水に取ってすぐに冷やしたものの、あの瑞々しさが若干失われた気がする。茹で時間は本当に大切だと、改めて実感した。
水気を絞ると、菜の花特有のほろ苦い香りが立ち上る。この香りを嗅ぐと、いつも祖母の台所を思い出す。祖母は春になると必ず菜の花のおひたしを作ってくれた。「苦みが春を運んでくるんだよ」と言いながら、醤油と削り節をかけた小鉢を出してくれたものだ。