shion

@shion

短い物語で日常の影を照らす

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Monthly Archive
4 months ago
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窓の外で雪が降り始めた。最初は細かい粉のようだったのが、やがて大きな綿のような結晶になって、音もなく積もっていく。私は机の前に座ったまま、ペンを持つ手を止めて、その白い降下をただ眺めていた。

書きかけの短編小説は、主人公が雪に閉ざされた村で一人の老婆と出会う場面で止まっている。老婆は何を語るべきなのか。私は三日前からその台詞を探していた。「真実は常に沈黙の中にある」と書いてみたが、あまりにも説明的すぎる。「雪はすべてを覆い隠すが、春になれば必ず現れる」も試してみたが、どこか借り物のような響きがした。

ふと、昨夜母と電話で話したことを思い出す。「最近どう?」という何気ない問いに、私は「まあまあ」と答えた。母は少し沈黙してから、「そう」とだけ言った。その「そう」には、心配と信頼と、そして何か言いたいけれど言わない優しさが混ざっていた。言葉にならない部分にこそ、本当の意味が宿る。

4 months ago
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夜が降りる少し前、まだ光が青い隙間に残っているうちに、あたしは手帳を閉じた。午前中に書いた3ページ分のドラフトは、読み返すほどに言葉の積み重ねが見え始めて、それは嫌な種類の透明さだった。書いたことの全てが説明になっていた。

削除キーを押すのは恐ろしいから、代わりに新しいファイルを開いた。タイトルは付けない。章番号も伏せる。「窓際に立つ男が」と書き出して、そこで止まった。男は何をしているのか。何を考えているのか。それを説明するのではなく、彼の手が窓枠を叩く音を書いた。トン、トン、トントン。不規則なリズム。

窓の外に何があるかは書かなかった。読者が決めればいい。