先週の土曜日、明大前を出発したのは午前九時半ごろだった。北沢川の暗渠跡をたどって三軒茶屋まで歩くつもりで、前日に地図も確認しておいた。確認しておいたのに、甲州街道を渡ってすぐ地図を開いたら、スマホの画面が自分の向いている方向と真逆になってい...
#街歩き
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先週の土曜日、明大前を出発したのは午前九時半ごろだった。北沢川の暗渠跡をたどって三軒茶屋まで歩くつもりで、前日に地図も確認しておいた。確認しておいたのに、甲州街道を渡ってすぐ地図を開いたら、スマホの画面が自分の向いている方向と真逆になってい...
西武新宿線の野方を降りたのは十一時すぎで、ホームの階段を下りながら「南口はどっちだったか」と五秒ほど考えてから北口に出た。目指していたのは南だったので、商店街の入り口をくぐって反対方向に五分ほど歩いてから気づいた。引き返しながら「でも商店街...
今日は亀戸から曳舟まで、東武亀戸線の線路に沿って歩くつもりだった。「沿いに」と書いたが実際には亀戸駅の改札を出た瞬間、南口のつもりが北口に出ていたことに気づいて引き返し、さらに駅前のロータリーで地図を開いて確認したところ、線路の東側を歩くべ...
五月の第三金曜日、菊川駅の南口から出て、地図を確認せずにそのまま歩き始めた。五分ほど進んだところで、向かいから来た配達員の自転車と目が合い、自分が完全に逆方向へ進んでいたことに気づいた。スマホの地図は最初から正しかった。私の頭の中の地図が、...
荻窪の南口から出るつもりが、なぜか北口に立っていた。改札を抜けた瞬間に「あ、逆だ」と気づいたが、もう人の流れに乗ってしまっていて、引き返すタイミングを失った。仕方ないので北口から南下することにした。地図を確認したら、そのほうがむしろ善福寺川...
朝の渋谷駅、いつもの雑踏を抜けて宮益坂を登っていたら、妙なことに気がついた。道の左側を歩く人の半分以上が、無意識に電柱の影を避けている。日差しが強いわけでもないのに、体が勝手に光を選んでいるらしい。僕も試しに影の中を歩き続けてみたけれど、な...
朝の通勤路で、いつもと違う道を選んでみた。地図アプリを見ながら歩いていたら、小さな商店街に迷い込んでしまった。スマホばかり見ていて気づかなかったのだが、そこには昭和の匂いが残る八百屋や豆腐屋が並んでいた。 豆腐屋の前を通ったとき、湯気と大豆...
朝の通勤電車で、隣に座った中年の男性が膝の上で折りたたんでいる地図を見て、思わず二度見してしまった。スマホ全盛の時代に、紙の地図。しかもかなり使い込まれていて、折り目が白くなっている。「すみません、その地図どこで買われたんですか?」と聞いて...
朝の通勤電車を一本遅らせて、駅前の新しい商店街を歩いてみた。開店準備中のパン屋から、バターと小麦の甘い香りが漏れてくる。シャッターが半分開いた隙間から、焼きたてのクロワッサンが整然と並ぶ姿が見えた。 「おはようございます」とすれ違った店主ら...
朝の通勤電車で、隣に座った老人が地図アプリを開いたまま眠っていた。画面には「目的地まで残り12分」と表示されていて、彼が寝過ごさないか気になって仕方がなかった。結局、私が降りる駅まで彼はずっと眠っていた。人の心配をしながら、自分も乗り過ごし...
駅から一つ手前で降りてみた。いつもの帰り道を少しだけ変えるだけで、見える景色がこんなにも違うのかと驚く。商店街のアーケードを抜けると、夕暮れの光が建物の隙間から斜めに差し込んでいて、思わず足を止めた。アスファルトの匂いと、どこかの家から漂っ...
朝八時半、谷中の路地を歩いていると、古い木造アパートの隙間から猫が三匹、まるで作戦会議でもしているかのように集まっていた。一匹がこちらをちらりと見て、まるで「観光客か、また」とでも言いたげな表情をする。確かに、谷中銀座に向かう観光客の流れと...
朝の散歩で久しぶりに商店街の裏路地を通ったら、見慣れた銭湯の煙突が消えていた。三ヶ月前まで確かにそこにあった、あの青いタイルの建物が駐車場になっている。 立ち止まって見ていると、隣の八百屋のおばさんが「ああ、先月閉まったのよ」と声をかけてく...
朝の通勤路をいつもと逆向きに歩いてみた。些細な実験だけれど、見える景色がまるで違う。同じ商店街なのに、店の看板の裏側ばかり目に入って、「ああ、こんなに色褪せていたんだ」と妙に納得してしまう。 角のパン屋から漂ってくる焼きたての匂いに誘われて...
駅前の再開発エリアを歩いていたら、工事現場の囲いに貼られた完成予想図が目に入った。ガラス張りの高層ビルと整然とした広場。でも今そこにあるのは、古いラーメン屋と雑居ビルと、謎の看板が三つも重なった電柱だけ。完成予想図の中では、その電柱が立って...
朝の通勤路を少しだけ変えてみた。いつもは大通りを真っすぐ駅まで歩くのだけれど、今日は一本裏の商店街を抜けてみることにした。理由は特にない。ただ、同じ景色に飽きたというだけだ。 商店街に入ると、すぐに八百屋の前から大根の土の匂いがした。店先に...
朝の光が斜めに差し込む路地を歩いていると、古い商店街の軒先から焼き芋の甘い香りが漂ってきた。まだ9時前だというのに、もう石焼き芋の屋台が準備を始めている。「早いですね」と声をかけると、おじさんは「土曜は早起きの散歩客が多いんでね」と笑った。...
朝の通勤電車を一本遅らせて、駅前の商店街を歩いてみた。普段は素通りする道だけれど、金曜日の朝9時過ぎという時間帯は想像以上に独特の空気が流れていた。八百屋の店先では水を撒いた後の湿った石畳が太陽の光を反射していて、その上に並べられた春キャベ...
水曜日の午後、神保町の古書店街を歩いていたら、不思議な体験をした。目的もなくふらふらと歩くつもりが、気づけば三時間も経っていた。 最初に入った店で、昭和40年代の旅行ガイドブックを見つけた。当時の京都案内には「喫茶店でコーヒー一杯80円」と...
朝の通勤路をいつもと逆方向に歩いてみた。たったそれだけで、見慣れた街が妙に新鮮に見える。普段は背中を向けている古い煙草屋の軒先に、手書きの「本日休業」の札が掛かっていた。あの店、いつも開いてるイメージだったのに、店主にも休みがあるのか。当た...