kaori

#ホラー

52 entries by @kaori

5 months ago
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十五年ぶりに故郷へ帰った時、駅前の風景はほとんど変わっていなかった。けれど、あの古い公衆電話ボックスだけは、まだそこにあった。

小学生の頃、私たちの間で噂されていた話がある。「夜の十一時四十四分に、あの電話ボックスから家に電話をかけると、過去の自分が出る」

5 months ago
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深夜二時、湯川アパートの三階廊下。

電球は切れかけていた。ジリジリ、と不規則に光っては消える。私は最後のゴミ袋を引きずりながら、ゴミ捨て場へと向かった。

引っ越してきて三週間。このアパートの住人にまだ会ったことがない。隣の部屋も、上の階も、誰がいるのか分からない。管理人は「みんな夜勤が多いから」と笑った。

5 months ago
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合わせ鏡の教室

夜の学校は、昼間とはまったく違う顔を持っている。

私が教育実習で配属された古い小学校には、妙な言い伝えがあった。3階の音楽室で夜に合わせ鏡をすると、「もう一人の自分」が現れるという。

5 months ago
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階段の数を数えてはいけない。それは小学校三年の時、転校生の山田くんが教えてくれたことだった。

「なんで?」

「数えると、変わるから」

5 months ago
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階段の踊り場で、彼女は毎日待っている。

通学路の途中にある古い団地。昭和四十年代の建物で、住人のほとんどは高齢者だ。エレベーターはなく、薄暗い階段を上らなければならない。

私が毎朝その前を通るのは八時半。彼女がベランダに現れるのも、いつも同じ時間だ。

6 months ago
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駅までの帰り道、いつもより遅くなってしまった。午後十時を回ると、この住宅街は街灯も少なく、人通りもまばらになる。

角を曲がると、見覚えのない路地が目に入った。こんな道、あっただろうか。毎日通っているはずなのに。でも確かに、この路地を抜ければ駅まで五分は短縮できる。

足を踏み入れると、空気が変わった気がした。湿った、古い匂い。路地の奥は街灯が届かず、闇が深い。

6 months ago
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雨の日は、いつもこの道を通らないことにしている。

けれど今日に限って、定期の路線バスが運休していた。迂回路を使うしかない。傘を差し直して、私は薄暗い住宅街へと足を踏み入れた。

細い路地が入り組んでいる。古びた木造の家々が立ち並び、人の気配はない。雨音だけが、やけに大きく耳に届く。

6 months ago
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深夜二時、スマホの明かりだけが部屋を照らしていた。

SNSを眺めていると、フォローしていない人からメッセージが届いた。「お願いです。読まないでください」

意味が分からず、そのアカウントのページを開こうとした瞬間、スマホが一瞬フリーズした。画面に映ったのは、自分の部屋。今、この瞬間の。

6 months ago
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放課後の四時半、私は職員室で採点をしていた。

窓の外はすでに薄闇に包まれている。冬の日は短い。他の教師たちは既に帰宅していて、校舎はしんと静まり返っている。

ふと、廊下から子どもの足音が聞こえた。

6 months ago
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あの階段は、いつも誰かが通っている。

北校舎の裏、誰も使わない非常階段。放課後、そこを通りかかると、必ず足音が聞こえる。軽い、女の子の足音。でも、見上げても誰もいない。

最初は気のせいだと思った。風の音か、自分の足音の反響かと。でも、立ち止まると音も止まる。歩き出すと、また同じリズムで上から降りてくる。

6 months ago
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深夜零時を回って、アパートの廊下を歩いていた。階段の踊り場に差し掛かると、微かに水音が聞こえた。滴る音。規則的で、少しずつ近づいてくる。

足を止めた。

音は止まった。

6 months ago
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雨の音が窓を叩いている。

夜の図書館は静かだ。閉館時間はとうに過ぎているが、私は論文を仕上げなければならなかった。司書の田村さんが特別に鍵を貸してくれた。「十二時までには必ず出てくださいね」と念を押されたことを思い出す。

時計を見る。十一時四十五分。あと十五分だ。