夜の十一時を過ぎた頃、私は駅のホームに一人立っていた。 終電まであと十分。蛍光灯がひとつ、ゆっくりと明滅していた。 反対側のホームに、女が立っていた。 白いワンピース、というわけではない。ごく普通のグレーのコートを着た、どこにでもいそうな女...
#都市伝説
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夜の十一時を過ぎた頃、私は駅のホームに一人立っていた。 終電まであと十分。蛍光灯がひとつ、ゆっくりと明滅していた。 反対側のホームに、女が立っていた。 白いワンピース、というわけではない。ごく普通のグレーのコートを着た、どこにでもいそうな女...
夏の終わり、田中みずきは終電に乗り損ねた。 駅から家まで、歩いて二十分。慣れた道だ。でも、こんな時間に歩くのは初めてだった。 街灯の光が、アスファルトに細長い影を作る。みずきの後ろに、みずきの影が伸びている。 当たり前のことだ、と思った。...
その夜、残業を終えて会社を出たのは、もう零時を過ぎた頃だった。 駅まで続く商店街は人気ひとけがなく、シャッターの並ぶ通りに自分の足音だけが響いていた。信号が変わるたびに立ち止まる。赤、青、赤、青。誰もいないのに、なぜか信号を守っていた。 途...
梅雨の合間、雨が止んだ夜のことだ。 友人の真奈から電話があったのは、午後十一時を少し回った頃だった。声が妙に平坦で、「鏡を見てはいけない」とだけ言った。それだけ言って、電話は切れた。 冗談だろう、と思いながらも、私はその夜、洗面台の鏡に布を...
夕方六時を過ぎた頃、校舎はひっそりと静まり返っていた。 合唱部の練習が終わり、部員たちが帰ったあとで、佐藤理沙は音楽室に楽譜を忘れてきたことに気づいた。音楽室は四階にある。取りに行って、帰るだけ。大した話ではなかった。 昇降口から入ると、廊...
夜の十一時過ぎ、駅のホームで最終電車を待っていた。 人影はまばらで、蛍光灯がひとつ、奥の方でゆっくりと明滅していた。ベンチに座って、スマートフォンを眺めていると、隣に誰かが腰を下ろした。 気配で気づいた。視線を向けずに、画面越しに確認した。...
深夜二時の駅のホームで、私は最終電車を待っていた。 誰もいないはずだった。時刻表を三回も確認した。でも、ホームの端に、女の人が立っていた。 黒いコートを着て、じっと線路を見下ろしている。髪が長くて、顔は見えない。 「もうすぐ来ますよ」 私は...
深夜二時、私は学校の屋上にいた。 取材のためだ。ある生徒が「夜中に屋上から音が聞こえる」という噂を教えてくれた。教師に聞いても、屋上の扉は施錠されているという。だが、噂は消えない。 懐中電灯を消して、目を慣らす。月明かりだけが頼りだった。...
放課後の音楽室に忘れ物を取りに行ったのは、秋の夕暮れ時だった。 廊下はもう薄暗く、窓から差し込む光が床に長い影を落としていた。音楽室の扉を開けると、いつもの木の匂いと、微かに埃っぽい空気が鼻をついた。 楽譜を取って、すぐに帰るつもりだった。...
深夜二時、コンビニの蛍光灯が白く滲んでいた。 バイト最終日。明日から新しい職場だ。レジを閉めて、床を掃除して、あとは帰るだけ。そう思っていた。 「すみません」 振り向くと、誰もいない。 店内を見回す。客はいない。防犯カメラのモニターを確認す...
深夜二時、コンビニからの帰り道。いつもの住宅街を歩いていると、見慣れない路地に気づいた。 この道、あったかな。十年以上この街に住んでいるのに、記憶にない。好奇心に負けて、その路地へ足を踏み入れた。 街灯がひとつもない。スマホの明かりだけが頼...
毎晩十時半、私は同じ道を歩いて帰る。駅から自宅まで、わずか十五分の道のり。街灯が三つ並ぶ商店街を抜け、暗い住宅街に入り、小さな公園の脇を通る。 三週間前から、足音が聞こえるようになった。 最初は気のせいだと思った。コツ、コツ、コツ。私の歩調...
駅のトイレで手を洗っていたとき、鏡に映る自分の後ろに誰かが立っているのが見えた。 振り返っても誰もいない。でも鏡の中では、その人影がまだそこにいる。黒い髪の女性だった。じっと私を見ていた。 それから毎日、同じ時間に同じ駅を通るようになった。...
深夜二時、コンビニの蛍光灯が白く輝いていた。 バイト帰りの私は、いつものように角を曲がり、公園の脇を通り抜ける。誰もいない滑り台が、街灯の下で影を落としている。 その時、公園の奥にある古い公衆トイレから、かすかな光が漏れているのに気づいた。...
深夜、アパートの水道から聞こえる音で目が覚めた。 ぽた、ぽた、ぽた。 規則正しい滴りの音。蛇口はしっかり閉めたはずなのに。仕方なく起き上がり、台所へ向かう。月明かりだけが頼りだった。 蛇口は完全に閉まっていた。でも音は止まない。 ぽた、ぽた...
最近、アパートの四階に引っ越してきた。古い建物だが、家賃が安く、駅からも近い。 初めて気づいたのは、三日目の夜だった。 廊下を歩いていると、隣の部屋——402号室——のドアの隙間から、微かに光が漏れている。ドアノブのすぐ下、ほんの数センチの...
あの日、終電を逃した私は、普段使わない地下鉄の出口から地上へ出た。 階段を上がりきると、見慣れない商店街が広がっていた。シャッターが下りた店が並び、街灯が所々で点滅している。スマホの地図アプリを開いたが、なぜか現在地が表示されない。 仕方な...
深夜二時、いつものコンビニで缶コーヒーを買った。 レジの店員は見たことのない女性だった。青白い顔、長い黒髪。名札には何も書かれていない。彼女は無言で商品を受け取り、バーコードを通した。ピッという音が妙に遠く聞こえた。 「三百円です」 声が低...
深夜二時、私は目を覚ました。喉が渇いていた。 台所へ向かう途中、廊下の窓から外を見ると、隣のマンションの一室に明かりが灯っていた。四階の、いつも暗い部屋だ。 窓際に人影が見えた。長い髪の女性が、じっと動かずこちらを向いている。いや、こちらを...
深夜二時、私は古いアパートの階段を上っていた。三階に住む祖母の部屋へ向かう途中、二階と三階の間の踊り場で足を止めた。 そこに、小さな窓がある。 昼間は気にも留めなかったその窓から、今夜は微かな光が漏れている。月明かりだろうか。近づいてみると...