駅のトイレで手を洗っていたとき、鏡に映る自分の後ろに誰かが立っているのが見えた。
振り返っても誰もいない。でも鏡の中では、その人影がまだそこにいる。黒い髪の女性だった。じっと私を見ていた。
それから毎日、同じ時間に同じ駅を通るようになった。最初は怖かったけれど、不思議なことに、その女性は何もしてこない。ただ鏡の中に立っているだけ。
駅のトイレで手を洗っていたとき、鏡に映る自分の後ろに誰かが立っているのが見えた。
振り返っても誰もいない。でも鏡の中では、その人影がまだそこにいる。黒い髪の女性だった。じっと私を見ていた。
それから毎日、同じ時間に同じ駅を通るようになった。最初は怖かったけれど、不思議なことに、その女性は何もしてこない。ただ鏡の中に立っているだけ。
深夜二時、コンビニの蛍光灯が白く輝いていた。
バイト帰りの私は、いつものように角を曲がり、公園の脇を通り抜ける。誰もいない滑り台が、街灯の下で影を落としている。
その時、公園の奥にある古い公衆トイレから、かすかな光が漏れているのに気づいた。
深夜の補習が終わったのは十時を過ぎていた。校舎に残っているのは私だけのはずだった。
三階の教室を出て、階段を降りようとした時、下の階から足音が聞こえた。
誰かいる。
深夜、アパートの水道から聞こえる音で目が覚めた。
ぽた、ぽた、ぽた。
規則正しい滴りの音。蛇口はしっかり閉めたはずなのに。仕方なく起き上がり、台所へ向かう。月明かりだけが頼りだった。
最近、アパートの四階に引っ越してきた。古い建物だが、家賃が安く、駅からも近い。
初めて気づいたのは、三日目の夜だった。
廊下を歩いていると、隣の部屋——402号室——のドアの隙間から、微かに光が漏れている。ドアノブのすぐ下、ほんの数センチの隙間。誰かが中にいるのだろうと思い、気にせず自分の部屋に入った。
あの日、終電を逃した私は、普段使わない地下鉄の出口から地上へ出た。
階段を上がりきると、見慣れない商店街が広がっていた。シャッターが下りた店が並び、街灯が所々で点滅している。スマホの地図アプリを開いたが、なぜか現在地が表示されない。
仕方なく歩き始めると、一軒だけ明かりのついた小さな喫茶店があった。「カフェ・ミズカガミ」という看板。中には客がいないようだったが、ドアには「営業中」の札が掛かっている。
深夜二時、いつものコンビニで缶コーヒーを買った。
レジの店員は見たことのない女性だった。青白い顔、長い黒髪。名札には何も書かれていない。彼女は無言で商品を受け取り、バーコードを通した。ピッという音が妙に遠く聞こえた。
「三百円です」
深夜二時、私は目を覚ました。喉が渇いていた。
台所へ向かう途中、廊下の窓から外を見ると、隣のマンションの一室に明かりが灯っていた。四階の、いつも暗い部屋だ。
窓際に人影が見えた。長い髪の女性が、じっと動かずこちらを向いている。いや、
深夜二時、私は古いアパートの階段を上っていた。三階に住む祖母の部屋へ向かう途中、二階と三階の間の踊り場で足を止めた。
そこに、小さな窓がある。
昼間は気にも留めなかったその窓から、今夜は微かな光が漏れている。月明かりだろうか。近づいてみると、窓の向こうには何もない。ただの壁だ。このアパートの構造上、窓の外側には隣の建物の壁しかないはずだった。
雨上がりの帰り道、いつも同じ水溜まりがある。商店街の角を曲がったところ、少し窪んだアスファルトに溜まる浅い水。
最初に気づいたのは先週の木曜日だった。
水溜まりを跨ぐとき、何気なく見下ろした。そこに映っているのは曇り空と私の姿。でも、一瞬だけ、私の隣に誰かが立っていた気がした。
三週間前から、夜中の三時に必ず目が覚める。
最初は気のせいだと思っていた。でも毎晩、ちょうど三時になると何かに引っ張られるように意識が浮上する。真っ暗な部屋の中で、私は天井を見つめる。
そして、音が聞こえる。
深夜二時、コンビニの自動ドアが開く音がした。
私はレジの奥で棚卸しをしていた。客は誰もいないはずだった。振り向くと、入口には誰もいない。ドアはゆっくりと閉まっていく。
センサーの誤作動だろうと思った。