七月の京都、祇園祭の余韻がまだ空気に漂う夕暮れどき、石畳の細い小路を歩いていると、暖簾をくぐる人影に誘われるように、ある老舗の料亭へ足を踏み入れた。
席につくと、まず目に飛び込んできたのは、白磁の器に静かに横たわる鱧の落としだった。湯引きされた身は、白い牡丹の花びらのように、ふわりと端を巻かせている。氷を敷いた皿の上に並ぶ姿は、夏の涼しさそのものを切り取ったような美しさで、しばらく手をつけるのをためらうほどだった。
箸を持ち上げると、ほのかに磯の香りが漂ってくる。川と海をまたぐ鱧ならではの、清潔な水の記憶を帯びた香りだ。梅肉を少しだけのせて、口へ運ぶ。