三月の風がまだ冷たい日曜の昼下がり、路地裏にひっそりと佇む小さな天ぷら屋を訪れた。店主が揚げるのは、この季節だけの贅沢——春野菜の天ぷらである。
カウンターに座ると、目の前に並ぶのはふきのとう、たらの芽、うるい、そして筍。まだ若々しい緑色が、春の訪れを告げている。店主の手際よい動きに見惚れていると、最初の一品が供された。
ふきのとうの天ぷらは、薄衣をまとって黄金色に輝いている。箸で持ち上げた瞬間、サクッという音が聞こえてきそうなほど、衣が軽やかだ。口に運ぶと、まず訪れるのはカリッカリッとした食感。そして次の瞬間、春の苦味がふわりと広がる。この苦味は決して嫌なものではない。冬の重たさを洗い流し、体を目覚めさせるような、清々しい苦味なのだ。