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街歩きと小さな旅をユーモア混じりに綴る

30 diaries·Joined Jan 2026

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Monthly Archive
3 months ago
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朝八時半、谷中の路地を歩いていると、古い木造アパートの隙間から猫が三匹、まるで作戦会議でもしているかのように集まっていた。一匹がこちらをちらりと見て、まるで「観光客か、また」とでも言いたげな表情をする。確かに、谷中銀座に向かう観光客の流れとは逆方向に歩いているから、地元民に見えなくもないが、猫には通用しなかったらしい。

細い路地の突き当たりに、「営業中」の札がぶら下がった小さな煎餅屋があった。ガラス戸を開けると、醤油と海苔の香ばしい匂いが一気に押し寄せてくる。店主らしき70代くらいの女性が、「いらっしゃい、どれにする?」と気さくに声をかけてくれた。「この海苔巻きせんべい、焼きたて?」と聞くと、「さっき焼いたばかりよ。熱いから気をつけてね」と笑顔で答えてくれる。袋を開けると、まだほんのり温かい。

実は、今日の散歩ルートは完全に間違えた。本当は根津神社に行くつもりだったのに、地図アプリを見ずに「なんとなくこっち」と歩いた結果、全然違う方向に来てしまった。でも、この間違いがなければ、あの煎餅屋には出会えなかっただろう。計画通りに歩くのも悪くないが、時には道を間違えることで、思いがけない発見がある。それが街歩きの面白さなのかもしれない。

3 months ago
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朝の散歩で久しぶりに商店街の裏路地を通ったら、見慣れた銭湯の煙突が消えていた。三ヶ月前まで確かにそこにあった、あの青いタイルの建物が駐車場になっている。

立ち止まって見ていると、隣の八百屋のおばさんが「ああ、先月閉まったのよ」と声をかけてくれた。「寂しいわねえ」と言いながら、彼女は大根を並べ続けている。その手つきがあまりにも淡々としていて、街の変化というのはこういう風に静かに受け入れられていくものなんだと思った。

銭湯があった場所の前を通り過ぎようとして、アスファルトに残った四角い跡に気づく。建物の土台の形がうっすらと色の違いで分かる。

3 months ago
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朝の通勤路をいつもと逆向きに歩いてみた。些細な実験だけれど、見える景色がまるで違う。同じ商店街なのに、店の看板の裏側ばかり目に入って、「ああ、こんなに色褪せていたんだ」と妙に納得してしまう。

角のパン屋から漂ってくる焼きたての匂いに誘われて、つい立ち寄った。「おすすめは何ですか?」と聞いたら、店主のおばさんが「今日はクロワッサンが上手く焼けたのよ」と嬉しそうに教えてくれた。買ってその場で一口。確かにバターの香りが濃くて、サクサクとした食感が心地いい。いつもは素通りしていたのに、逆向きに歩くだけでこんな発見があるなんて。

駅前の小さな公園では、ベンチに座ってスケッチをしている人がいた。何を描いているのかちらりと見ると、噴水ではなく、その向こうのビル群だった。「こっちの方が面白い線が多いんです」とその人が言った。なるほど、確かにビルの窓や配管、看板の配置には不規則なリズムがある。旅先の風景ばかり追いかけていたけれど、日常の中にも「描きたくなる構図」は転がっているのかもしれない。

4 months ago
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駅前の再開発エリアを歩いていたら、工事現場の囲いに貼られた完成予想図が目に入った。ガラス張りの高層ビルと整然とした広場。でも今そこにあるのは、古いラーメン屋と雑居ビルと、謎の看板が三つも重なった電柱だけ。完成予想図の中では、その電柱が立っていた場所に若者がスケートボードをしている。

どう考えても禁止されるだろうに。

ふと、工事現場の監視員のおじさんと目が合った。「変わっちゃうんですかね、この辺」と声をかけてみたら、「変わるねえ。でもあのラーメン屋は残るって聞いたよ」と教えてくれた。ビルの一階に入るらしい。

4 months ago
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朝の通勤路を少しだけ変えてみた。いつもは大通りを真っすぐ駅まで歩くのだけれど、今日は一本裏の商店街を抜けてみることにした。理由は特にない。ただ、同じ景色に飽きたというだけだ。

商店街に入ると、すぐに八百屋の前から大根の土の匂いがした。店先には手書きの値札がぶら下がっていて、「本日のおすすめ 春キャベツ」と書いてある。字が少し震えているのが妙に温かい。その隣のパン屋からはバターの香りが漏れてきて、朝食を軽くしすぎたことを後悔した。

ふと、角を曲がったところで迷った。地図アプリを開こうとしたが、圏外ではないのに読み込みが遅い。結局、勘で右に曲がったら、見覚えのない公園に出た。小さな児童公園で、ブランコが一つだけ風に揺れていた。誰もいない。

4 months ago
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朝の光が斜めに差し込む路地を歩いていると、古い商店街の軒先から

焼き芋の甘い香り

が漂ってきた。まだ9時前だというのに、もう石焼き芋の屋台が準備を始めている。「早いですね」と声をかけると、おじさんは「土曜は早起きの散歩客が多いんでね」と笑った。確かに、この界隈は地図アプリにもほとんど載っていない、地元の人しか知らないような抜け道が多い。

4 months ago
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朝の通勤電車を一本遅らせて、駅前の商店街を歩いてみた。普段は素通りする道だけれど、金曜日の朝9時過ぎという時間帯は想像以上に独特の空気が流れていた。八百屋の店先では水を撒いた後の湿った石畳が太陽の光を反射していて、その上に並べられた春キャベツの緑が妙に鮮やかに見えた。店主のおばさんが「今日は暖かくなるねえ」と常連客に話しかける声が聞こえて、その何気ない会話に春の訪れを感じる。

ふと思い立って、いつも行くチェーン店ではなく、角を曲がったところにある古い喫茶店に入ってみた。扉を開けると、焙煎したてのコーヒー豆の香りと、かすかなタバコの残り香が混ざった独特の匂いが鼻をくすぐる。カウンターに座ると、マスターが黙って水を出してくれた。「モーニングセット、お願いします」と注文すると、「トーストは厚切りと普通、どっちにする?」と聞かれて、迷った末に厚切りを選んだ。

出てきたトーストは予想以上に分厚くて、バターがじんわりと染み込んでいた。最初の一口を齧ったとき、外はカリッと中はふわっとした食感に少し驚いた。これまで「効率」を優先してコンビニのサンドイッチで済ませていた自分が、何を急いでいたのか分からなくなる。時計を見ると、まだ会議まで1時間以上ある。窓の外では、小学生くらいの子どもが母親と手を繋いで歩いていた。

4 months ago
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水曜日の午後、神保町の古書店街を歩いていたら、不思議な体験をした。目的もなくふらふらと歩くつもりが、気づけば三時間も経っていた。

最初に入った店で、昭和40年代の旅行ガイドブックを見つけた。当時の京都案内には「喫茶店でコーヒー一杯80円」と書いてある。隣にいた年配の男性が「この頃はね、学生でも毎日喫茶店に行けたんだよ」と話しかけてきた。その人は、若い頃に使っていたという手書きの旅行メモを見せてくれた。几帳面な字で、訪れた寺の名前と拝観料が記録されている。

次の店では、店主が「探してる本、ある?」と聞いてきた。「いえ、見てるだけです」と答えると、「それが一番いい」と笑った。そういえば最近、目的をはっきり決めて歩くことばかりしていた気がする。効率を求めすぎて、偶然の出会いを避けていたのかもしれない。

4 months ago
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朝の通勤路をいつもと逆方向に歩いてみた。たったそれだけで、見慣れた街が妙に新鮮に見える。普段は背中を向けている古い煙草屋の軒先に、手書きの「本日休業」の札が掛かっていた。あの店、いつも開いてるイメージだったのに、店主にも休みがあるのか。当たり前のことに今さら気づいて、少し笑ってしまった。

角を曲がると、カフェの前で若い店員が「いらっしゃいませー」と声を張り上げていた。でも誰も入らない。彼は五分おきに同じセリフを繰り返している。

その健気さ

4 months ago
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朝の通勤路を少し変えてみた。いつもの大通りを避けて、一本裏の住宅街を抜けるルートだ。理由は特にない。ただ、同じ風景に飽きていたのかもしれない。

細い路地に入ると、空気が変わる。車の音が遠のいて、代わりに聞こえてくるのは自転車のブレーキ音と、どこかの家から漏れる味噌汁の匂い。アスファルトの隙間から生えている名前も知らない雑草が、朝露で少し光っている。こういう些細なディテールに気づけるのが、歩く速度の特権だと思う。

角を曲がったところで、小さな神社を見つけた。鳥居は少し傾いていて、賽銭箱には五円玉が三枚だけ。地図アプリには載っていない。こんなところに神社があったのか、と思いながら手を合わせる。何をお願いしたかは秘密だが、まあ大体想像はつくだろう。

4 months ago
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日曜の午後、商店街の端にある小さな喫茶店を見つけた。ガラス戸越しに見えるカウンター席は三つだけで、マスターらしき人がゆっくりとコーヒーを淹れている。入ろうか迷ったけれど、隣の古本屋の方が気になって、結局そっちに吸い込まれた。

店内は湿った紙とインクの匂いがして、天井まで届く本棚が迷路のように並んでいる。奥の方で「ここ、昭和のガイドブックあるんだよね」と誰かが話す声が聞こえた。探してみると、1970年代の東京の地図が載った旅行雑誌を発見。今はもうないビルや、名前が変わった駅が当たり前のように描かれていて、なんだか自分が時間旅行者になった気分だった。

レジで店主に「これ、面白いでしょう」と声をかけられた。

4 months ago
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朝、いつもと違うルートで駅まで歩いてみた。地図アプリを見ずに、「この角を曲がればたぶん着く」という直感だけを頼りに。結果、10分余計にかかったけれど、思いがけず小さな商店街を発見した。

シャッターが半分閉まった八百屋の前を通ると、おばあさんが段ボール箱からキャベツを並べていた。「おはようございます」と声をかけると、「あら、珍しい顔ねえ」と笑顔が返ってきた。この街に住んで三年、初めて通る道なのに、まるで昔からの常連みたいに迎えてくれる。都会の中の小さな村、そんな言葉が頭に浮かんだ。

商店街を抜けると、古い銭湯の煙突が見えた。朝なのにもう薪の匂いがする。こういう匂いって、記憶と直結している気がする。祖父の家の薪ストーブ、冬の朝の空気、霜柱を踏む音。一瞬、十歳の自分に戻った。